ギブ・ミー・カフェイン

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凛は「ああ」と気のない返事。 「アイツね。今思い出しても笑えるよ」 反動を付けてベッドから足を下ろして立ち上がり、後ろで手を重ねて、部屋の中をゆっくり円を描くように歩く。 「去年の冬かな。何人もフッたあたしのことを聞き付けて、中ボスのあとの大ボスみたいな感じで、あんとき一番モテてた高天原があたしんとこ来たんだよ。そう、あの茶髪ロン毛チャラ男。あたしは告白断ったけど10日ぐらい毎日付き纏われたね。そしたら周りの奴らも『二人は付き合って当然』みたいな空気になったんだよ。んで、まあ、11月終りごろでクリスマスも近かったからかアイツもしびれをきらしたかなんか知らないけど、クラスの奴らの前で公開告白みたいのやったのよ。こう、あたしの顎に軽く触れて『俺の女になれよ』ってね。で、そのあとのことは……よく覚えてない。とりあえず我に返って気づいたのはあたしを羽交い締めにしてるクラスの皆と、床にはいつくばってみっともなく許しを懇う高天原だった」 目は笑わず、口元だけでいびつに笑う。 「結局そいつはそれっきり。だからあたしは、男なんて所詮こんなもんかって思った。カッコつけてばっかりで、自分の願望ばっかり押し付けるのに、上手くいかないとすーぐボロが出る。モテ男と言われた奴ですらも」 「……」 凛はクルリとターンして、黙って話しを聞いていた雅人の正面に立つ。
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