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雅人が理解不能な恐怖に怯えていると、不意に部屋の扉がもげそうな勢いで開かれた。
「御主人様! どうかなさいましたか!?」
そこには少し呼吸を乱して、雅人の悲鳴を聞いて全力疾走してきたと思しきイブキ。
イブキは凛の姿を見ると、驚き半分、予想通り半分といった表情をしたあと、眼鏡の奥の切れ長の目をスッと細めた。
「……ああ、凛。お早う御座います。部屋にいないと思ったらやはりここにいたのですね」
「ん、おはよ。ねーさん。そんな息切らしてどうしたよ」
「凛こそ、御主人様を起こすのは私の仕事ですよ?」
にこりと口元だけが不自然に笑っていた。
しかし凛は不遜な態度を崩さない。
「ほら、前ねーさん無理して風邪引いたろ? だから負担を減らすために朝起こすくらいはやろうかと」
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