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「あの、御主人様、何を……」
「え、てっきりイブキさんも頭を撫でて欲しいもんだと」
「どんな解釈ですかっ」
「じゃあ命令です。『撫でさせて』」
「っ!」
――――『命令』
雅人が穏やかな笑顔で紡いだその言葉を聞いた瞬間、脊柱に電撃のようなものが走り、自分の中でカチリと何かのスイッチが入った気がした。
「イブキさんが以前風邪をひいたときに、自分で言ってましたよね? 『メイドは主人に従う』って」
「え、それは……あの……はい、その通りです。御主人様」
もごもごと言葉にならない言葉を発するイブキを、雅人はゆっくりと撫で続ける。
「イブキさんの髪、とっても艶があって素敵ですよ」
「そう、ですか……ありがとうございます……」
下を向いたせいで眼鏡が軽くずり落ちた。
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