プライベートは大切にしましょう

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「んー、今日も頑張りましたぁ……」 夕食後、一通り家事を終えたイブキは、一息吐きながら自室の扉を開ける。 白を基調とした、全体的に飾り気のない部屋。 小学生のころから愛用している学習机。パソコンデスク。下に洋服棚がついたベッド。ブックカバーつきの本がぎっしり詰まった本棚。先月のままめくられていないカレンダー。銀枠の壁掛け時計。家庭用電子ダーツの的。鏡付きのクローゼット。 イブキがクローゼットを開けると、中にはネコ、クマ、ウサギなどの動物がデフォルメされた、可愛らしい抱きまくらで埋めつくされていた。 「今日は~、っと」 縦長のウサギ抱きまくらを手に取り、抱きしめる。 そのまま夢遊病患者のような足どりで、ベッドに横向きに倒れ込んだ。 普段誰にも見せないような蕩けた顔でゴロンゴロンと寝返りを打つ。 「ん~」 至福の笑みを浮かべながら、モコモコのぬいぐるみに顔を埋める。頬擦りする。力いっぱい抱き締める。毛の柔らかさや綿の程よい反発を楽しむ。足をばたばたさせて悶えまくる。 そして、一際強くむぎゅ~、と抱きしめた後、脱力。 「…………。…………はぁ」 言いようのない虚無感が体を支配する。 この、幸福感のあとのむなしさはどうにかならないものか。
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