プライベートは大切にしましょう

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(でも、なんだか……) 同時に、なぜか胸のつっかかりがとれない。二人が仲がいいのは、喜ばしいことのはずなのに。 二人がぎゃんぎゃんと言い合っているのが、急に遠く感じた。 (ああ、これはきっと……) 思考の渦にとらわれそうになったとき、「でもな」と雅人の真剣な声色で我に返った。 「確かにな、凛は家事には色々問題があるかもしれない。だけど……俺が一番自然体で話ができる女の子だと思ってる」 「な……!? なんだよ、急に! バカ! バァーカッ!」 凛が顔をトマトみたいに赤くして腕をぶんぶんと振る姿が容易に想像できた。 「ふんっ! ならあたしも遠慮なくお前を殴れるってことだなっ!」 「おう! どんと来い!」 会話を聞いていたイブキは俯いて、メイド服の胸元を掴んだ。 曲がり角のすぐ先。 一歩踏み出せば見える距離。 しかし、そこがひどく別世界のように感じた。 「……」 掴んだ胸の苦しさが、自分の中のとある感情を証明している。 この感情は、多分、嫉妬。
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