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二人の漫才じみたやり取りは加熱する一方で、陽菜は二人の間でせわしなくオロオロしていた。
「御主人様」
喧騒の中、イブキのハスキーボイスが響き、二人はぴたりと言い合いをやめる。
有無を言わせぬイブキの一声。
この屋敷の秩序の象徴。
イブキは眼鏡のツルをくいっと持ちあげる。
その動作はキャラ作りでも何でもなく、単なるイブキの癖なのだが、もう何年も続けてきたそれは、違和感なく様になっている。
「お料理が冷めてしまいます。ダイニングに参りましょう」
表情一つ変えず、事務的に宣った。
「クールなイブキさん、萌えー!」
「……さ、参りましょう」
イブキは奇声をスルーしつつ、誰にも表情を見せないようにくるりと方向転換し、雅人をダイニングへ誘導した。
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