2318人が本棚に入れています
本棚に追加
「か、かわ……!?」
風邪で赤くなっていた顔が、その朱色を増した。
「イブキさんが『怖い』だなんて、意外で、可愛いなぁって」
「そんな、私なんて、怖いものだらけですよ」
「そうなんですか?」
「ええ。私はただ、臆病者なんです」
あらゆる負の感情を込めて、ベッドシーツを爪を立てるように掴む。
風邪で弱っていたせいかもしれない。
半日誰とも話さなかった反動かもしれない。
言葉は、ぽろりと口からでた。
イブキがメイドに必死になる理由。
イブキが普段から感情をあえて出さない理由。
それはメイドとしての義務感でもなんでもなく――――
「自分が、駄目な人間だと思われるのが、一番怖いです」
――――自分自身が否定される恐怖。
最初のコメントを投稿しよう!