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「……御主人様は、強いですね」
「そうですか?」
「いつも思うのですが、怖くはないのですか? 断られることが」
「んー。まあ、傷つくのは怖いよ。でも、自分から壁作っちゃうとさ、もったいなくない?」
「それは、そうですけど……」
「使い古された言葉だけど、『やらない後悔より、やった後悔』ってやつ。その人にまた次会える保証なんてないんだからさ、今に全力を尽くすだけです」
いつも通り雅人はにこやかに話すが、イブキの顔は曇った。
「……それは、事故で亡くなられた御両親のことですか?」
「あー、いや、そんな深い意味はありませんよ? でも確かに、いつのまにか俺の中の軸にはなってたかもですね」
その奥に光が燈っている雅人の瞳は、揺らがなかった。
「……」
イブキは無言で、思わず顔を背けた。
自分にとって、雅人の笑顔が眩し過ぎたから。
今までなるべく傷つかない生き方をしてきた、自分にとっては。
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