体調管理はしっかりしましょう

26/37
前へ
/271ページ
次へ
「……御主人様は、強いですね」 「そうですか?」 「いつも思うのですが、怖くはないのですか? 断られることが」 「んー。まあ、傷つくのは怖いよ。でも、自分から壁作っちゃうとさ、もったいなくない?」 「それは、そうですけど……」 「使い古された言葉だけど、『やらない後悔より、やった後悔』ってやつ。その人にまた次会える保証なんてないんだからさ、今に全力を尽くすだけです」 いつも通り雅人はにこやかに話すが、イブキの顔は曇った。 「……それは、事故で亡くなられた御両親のことですか?」 「あー、いや、そんな深い意味はありませんよ? でも確かに、いつのまにか俺の中の軸にはなってたかもですね」 その奥に光が燈っている雅人の瞳は、揺らがなかった。 「……」 イブキは無言で、思わず顔を背けた。 自分にとって、雅人の笑顔が眩し過ぎたから。 今までなるべく傷つかない生き方をしてきた、自分にとっては。
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2318人が本棚に入れています
本棚に追加