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「今日だけね」
そう言うと、蓮の視線が再び桜に向く。
そして彼は満足そうにゴロリとソファーに横になった。
「お風呂入ってくる。覗かないでね」
「まな板と勝負できる胸見てもね……」
「我慢だ。我慢しろ私。大人でしょ?」
「自己暗示?」
クスクスと楽しそうにする蓮を無視して、桜はお風呂に向かった。
薄い化粧を落している時に、目の前の鏡をじっと見つめる。
一人になると、嫌な記憶が蘇ってくる。
自分には魅力が無いのだろうか。
誰とも知らぬ、他の女に負けてしまうほどに。
そう思うと苦しくなって、シャワーを浴びながら声をおさえて泣いた。
あんな奴、大嫌い。
何で好きになったんだろう。
泣いてもスッキリなんてしない。
ただ胸がじくりと余計に痛んだだけだった。
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