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「天使さん…」
彼女は、もうほぼ意識がなく
心から話しかけていた。
「もうそろそろ時間だ」
「そう、ですか。
…あぁ、短い生涯だったなぁ」
「…悔いとか、残ってる?」
「少しだけ。いろいろ、
やりたいことあったなぁー」
「例えば?」
俺は、聞いてみる。
俺のできることだったら、
なんでもしてあげたい、
そう思ったから。
「例えばかぁ…、好きな人を
作ってみたかったかなぁ」
「えっ」
「私、ずっと入院してたから
そういう人いなかったんですよ」
俺は、…どうすればいいんだ。
「でも…、天使さんと
話をしているとき、
病気の事を忘れられて
笑っていられたの。
あんなに笑ったの何年ぶりかなぁ?」
…俺、どうすればいいか
わかった気がする。
「ありがとう。天使さん」
「…俺は、
天使さんじゃなくてルシフェル。」
「名前、いつ聞いても
教えてくれなかったのに…」
「お前は?」
「私は、エルザ・ミカエル」
「エルザかぁ…」
そう言って、俺は
彼女の肩に手を置く。
「もう、…行くの?」
「…、いや、エルザは
まだ連れて行けない」
「!…何で?」
「俺が、お前のこと好きだから。
お前には、まだ生きて欲しい」
「そんな…、
ルシフェルとは一緒にいられないの?」
「俺は天使、お前は人間。
一緒にいられるはずはない」
「一緒にいられないなら、私…」
彼女の目から涙がこぼれ落ちる。
「エルザ、幸せになれよ?」
そう言って、
俺は彼女の身体から病を抜き、
天界へと消えた。
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