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するとそれを言われたマルスという奴はキッとおれを睨み、その後言った。
「そうですか。それは失礼しました。ただ僕は世間知らずに現実を教えてあげようと思っただけですよ」
くっ……すごい悔しい気持ちだ…。
そうして教卓の前で俯き、只突っ立っていたおれに柏先生は優しく「席に戻っていいぞ」と言ってくれた。
席に戻って暗い気持ちのままいると、前の席の木崎が話し掛けてきた。
「魔法、使えないんだってな」
おれはこいつも馬鹿にしてるのか、と思ったが、その考えが間違っていたことを知る。
「魔法頑張って覚えたいんだろ?もし良ければおれも手伝わせてくれないか?」
……こんなおれにもさっきみたいな奴とは違って、こう接してくれる奴がいるんだ…。少し泣きそうになった。
「…手伝って…くれるのか?」
「あぁ、もちろんだ。木崎郁だ。よろしくな。えっと…空、でいいか?」
「あ、あぁ、全然いいよ」
「おれのことも名前で呼んでくれて構わないから!」
そう言って郁は笑った。とんでもなく爽やかで良い奴だ。
茶髪の髪は短めで、無邪気に明るく笑った顔は輝いてる…気がする。
そんなことを考えながら郁の方を見ていると、当然教卓も見えている訳で、他の人の自己紹介でも特技は各々の得意な魔法をしているようだった。
自分の自己紹介を考えるのに必死すぎて、そんなの見てなかった。
やっぱり魔法使えない奴なんていないんだな…。
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