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おれは必死に頭を働かせて自己紹介の内容を考えた。
こんなに頭を使うのは入試以来だろう。
問題は特技だ。
大した特技なんてないおれは何を言えばいいのか皆目検討もつかない。
いや、むしろ特技と呼べるものは無いのかもしれない。
大体どこからが特技と呼べてどこからが特技と呼べないのか、定義を教えていただきたい!
重大な問題だ。
今おれの脳内会議では特技の定義について活発に議論が為されている。
なんてことを考えてたら、もう一個前の席の奴が自己紹介をするために席を立った。
自分の出席番号の若さを恨む。
「はじめまして、木崎郁(キザキイク)と言います。頑張りたいことはー…えっと、今の魔法のレベルを上げていく!特技は…」
そう言って彼は開いた右手を皆に見えるように前に出した。
今、何て言った?
今の魔法のレベルを上げていく?
まるでもう魔法が使えるような―
「自然系魔法です」
―そう言って拳を握った彼の手から優しい黄緑色の光が洩れた。
すると彼の手の中に握られた光から芽が息吹き、根が無造作に生え、茎が伸び葉が並び、たちまち花を咲かせた。
これが魔法……。
驚きのあまり感想の声も出ず、手の中の花から視線が外せなかった。
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