5人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
僕が走ることを再び始めてから一週間と少し経った水曜日。選考会はいよいよ今週の土曜日だ。
今日もいつもと同じように走っていた。
走り始めたころと比べてペースが確実に違うことを自分でも感じることができる。
――実際、初めは35、6分かかった道のりを30分以内で走れる。
ワンッワンッ
(…ッ、またこいつか)
走っていると必ず吠えてくる犬がいる。雑種だしおそらくは野生の犬だろう。少し山の中へ入っていっているのでしょうがないといえばしょうがないのかもしれない。
最初は驚いていたが、いつも吠えてくるだけなので今日も特に気にせずに過ぎ去ろうとした。
しかし、何故だろう?
今日は過ぎ去った後から着いてくる。
吠えはしない、噛みつきもしない。ただまだ着いてくるだけだ。
折り返し地点まできてもまだ追ってくる。
そのまま少し人通りがあるところまで戻ってしまった。
どうにかして、振り切らないと…そう思っていた矢先、犬は急に止まって、ついてこなくなった。どうやらだいぶ頭がいいようだ。
次の日もその次の日もその犬はついてきた。
そして、その後も1人では退屈な道のりのパートナーになってくれた。
最初のコメントを投稿しよう!