幻幽の森

出会い

「『神隠しか？！人の消える森』…ひっどいネーミングだなぁ」

パサリ、と無造作に机に放られた新聞には、幾人かの男女の写真と青年が読み上げた文章が大きく載せられている。

先程入れたコーヒーを一口飲み…その温さに顔をしかめてカップを置いた。

そのまま放り投げた新聞の上、つまりは机の上に腰を下ろして窓の外を見る。

彼、司空輝<つかさそらき>は現代社会において、忘れ去られようとしている人種…魔術士だ。

と言っても彼自身がその非科学的な力を魔術と称することもなければ漫画やゲームの様に人に危害を加えるために使ったりしない。

あくまで、彼が彼の人生を楽しむため…要するに行きすぎた悪戯に使用される事が多い。

人のカツラを飛ばしてみたり、人の顔が犬に見えるように見せてみたり、噴水の水を真っ赤に変えてみたり。

そう、新聞やテレビで話題になる些細な事件は９割方、彼の仕業なのだ。