きっかけ

15/21

33人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
彼女は首を左右に振った 「わかりません」 無理矢理絞りだしたかのようなか細い声だった 彼女の死にたい理由は痛いくらいわかった 幼いながらに両親がいないのはかなり寂しかったに違いない ましてや誰かに殺されたなんて… 彼女から両親を奪った犯人が平然と生きていると思うと、苛立ちで頭がおかしくなりそうだった それと同時に俺は両親に反抗していた自分を恥じた 周りに客がいなくて良かったと思った こんな話はとても聞かせられない 「わからないって…なぜ?」 「不審火です。たまたま運よく私と妹は助かったんです。でも両親は…」 彼女は顔を手で覆った 辛い過去を思い出しているのかもしれない 「もういい。話さなくていいから。」 俺は大きく頷いた 「悪かった。君が思い出したくなかったことを思い出させてしまった…」 彼女は顔を手で覆ったまま、大丈夫ですと言った 「私変だ…なんでこんなを話しちゃったんだろ…すみません。もう世間からは忘れ去られたことなのに」 時効を言いたいのだろう 「いやいいんだよ。君のことを少しでも知れて良かった。でもなんで俺に相談したのかな?」 「それは…わかりません。なぜか気がついたら声を掛けていました」 彼女は首を傾げた
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加