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彼女は首を左右に振った
「わかりません」
無理矢理絞りだしたかのようなか細い声だった
彼女の死にたい理由は痛いくらいわかった
幼いながらに両親がいないのはかなり寂しかったに違いない
ましてや誰かに殺されたなんて…
彼女から両親を奪った犯人が平然と生きていると思うと、苛立ちで頭がおかしくなりそうだった
それと同時に俺は両親に反抗していた自分を恥じた
周りに客がいなくて良かったと思った
こんな話はとても聞かせられない
「わからないって…なぜ?」
「不審火です。たまたま運よく私と妹は助かったんです。でも両親は…」
彼女は顔を手で覆った
辛い過去を思い出しているのかもしれない
「もういい。話さなくていいから。」
俺は大きく頷いた
「悪かった。君が思い出したくなかったことを思い出させてしまった…」
彼女は顔を手で覆ったまま、大丈夫ですと言った
「私変だ…なんでこんなを話しちゃったんだろ…すみません。もう世間からは忘れ去られたことなのに」
時効を言いたいのだろう
「いやいいんだよ。君のことを少しでも知れて良かった。でもなんで俺に相談したのかな?」
「それは…わかりません。なぜか気がついたら声を掛けていました」
彼女は首を傾げた
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