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「だから相談しようと思ったんです」
「えっ?」
今日は彼女に驚かされてばかりだ
俺の肩は上下に弾んだ
「相談したら誰にも言わないし親身になってくれるって噂を聞いたから。なんとなくじゃなく、本当は選びました。ごめんなさい」
彼女は悪戯っ子のようにぺろっと舌を出した
俺は顔や言葉には表さなかったが、すごく嬉しかった
他の誰かではなく自分を選んでくれたことが…
告白された気分だった
「今日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました」
「気にしないでいいから」
俺は彼女の前で掌を左右にひらひらと動かした
むしろ歓迎だとは言えなかった
「また相談に乗ってくれたら助かります」
「それは全然いいんだけど…」
俺の心臓が大きく跳びはねた
彼女の方から言われるとは思いもしなかった
彼女は顔の前で手を組み、顎を引いた
兎の目からはいつの間にか涙は消えていた
「来週また会っていただけませんか?」
「俺でいいなら…」
俺は迷うことなく即答していた
しかし後からある不安が押し寄せてきた
「ただ会社の者に見つかったら色々うるさいからまたこの場所でいいかな?あまり知られたくないんだ。それとも違うところがいいかな?」
彼女は首を左右に振った
「とんでもない。このお店すごく気に入りました。また来たいくらいです」
満面の笑みを浮かべていた
よほど気に入ったのだろう
俺は安堵の表情を浮かべた
「良かった。じゃあ来週の金曜日八時にここでいいかな?」
彼女は大丈夫です、と頷いた
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