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俺は久しぶりに過去の恋愛を思い出していた
確か好きな人をデートに誘った夜はドキドキして眠れなかったものだ
誘うのも勇気がいる
断られたらどうしようと怖くなるのだ
久しぶりにそんな気持ちになっている自分がいた
どのくらいぶりだろうか?
俺は今までそんな気持ちを無意識に封印していたのかもしれない
今の俺の気持ちは明らかに弾んでいた
今日は眠れそうにないなと思った
「じゃあ出ようか。あまり遅くなるといけない」
俺は自分の腕時計を指差した
時刻は九時を回っていた
俺には責任がある
男ならいいが、女となると時間にも気を遣わなければならない
あっという間に時間が過ぎたような感じがした
時計を見てどこか物足りなさを抱いている自分に気づく
しかしそれを口に出してはいけない
「はい。出ましょうか。」
彼女は掌をくっつけ、ごちそうさまでしたと丁寧に頭を下げた
環境は悲惨だったかもしれないが、良い育ちをしていることがわかる
俺も彼女に倣った
「先に出てて」
俺は財布を出し、レジの前に立った
「割り勘にしましょう。申し訳ないです」
彼女は財布を握りしめ、背後に駆け寄ってきた
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