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俺は彼女を手で制した
男はこんなときカッコつけたがるものなのだ
「いいからしまっときなさい。君に出させるわけにはいかない」
財布からお札を抜き出し、ポンっと置いた
清々しい気分だった
彼女はブランド物の財布をカバンにしまった
「なんだかすみません。奢ってもらっちゃって…私から持ち掛けたことなのに…ごちそうさまでした」
彼女は深々と頭を下げた
長い綺麗な髪がヒラヒラと宙に舞った
「いいんだよ。それより気になったことを一つだけ聞いていいかな?」
店の人に見送られ、外に出た
二人は歩を進める
「どうぞ?」
彼女は俺の背中に答えた
「なんで俺に相談したのかな?」
歩く足を止め、彼女の方を振り返った
彼女は俺より少し後ろを歩いていた
彼女も足を止め、顎を引いて俺を見上げた
長い髪が風に揺れ、その風によってシャンプーの良い香りが俺の鼻孔をくすぐった
俺は彼女をまっすぐ見つめた
「言ったじゃないですか。皆相談してるからって…」
彼女は不思議そうに首を傾げた
やはりどこか違和感を感じる
「本当にそれだけ?」
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