境界線

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いつも金曜日は連休前で残業が増える それか機嫌が悪い上司に八つ当たりをされるかのどっちかだ だから今日は珍しかった まさに神の恵みだと一人ではしゃいでしまった もちろん誰もいないところで、である 俺は会社ではそんなキャラではない 「いいえ。さっき着きましたから」 彼女は疲れが吹き飛ぶような笑顔を見せてくれた 自然に俺も笑みを浮かべているのに気づいた 今日の彼女の私服は黒のワンピースだった 彼女の細いウエストが強調されており、いつも以上に色っぽく見えた 「何飲みますか?」 「うーん…君は?」 彼女はメニューを開き、それをぺらぺらとめくった 「私はカクテルで」 えっ?!と思わず声を漏らしてしまった 「今日はお酒飲むの?いつもは水なのに」 彼女はいつもお酒は飲まない 俺は彼女はお酒が嫌いとばかり思っていた だから俺は彼女に合わせていつも酒は控えていたのだ 俺だけ一人で飲む気にはなれなかった 「珍しいね。酒飲めたの?」 俺は彼女からメニューを受け取った 「少しだけですけどね。今日はなんだか飲みたい気分なんです」 彼女はふふっと笑った その笑いは魔女の微笑みのように見えた きっと服装がそう思わせたのかもしれない 彼女が林檎を持っている姿を想像し、一人で苦笑した 「そう…じゃあ俺はワインを貰おう。俺も今日はなんだか飲みたい気分だから」 俺は彼女の言葉をマネをし、二人で目を合わせて笑った 注文するとすぐに飲み物がやってきた それぞれに飲み物が手渡され、いつもとは違う雰囲気を味わいながらグラスを合わせた
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