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全身の力が抜けていく
夢の居心地良さが体中に染み付いていて、体が言うことを聞いてくれないでいた
「ほら立って」
「あのさ…」
彼女は何かを察し、掌を俺に向けてきた
「また金曜日に会いましょう。私久しぶりに幸せを感じれたの。あなたに抱かれることによって…だめだってわかってるんだけどもう止められないみたい。秘密の恋愛…初めてなの。よろしくね」
彼女はにっこりと微笑んだ
俺の気持ちを彼女は口にだしてくれたおかげで俺は何も言わないで済んだ
まさか彼女の方から言ってくれるとは思いもよらなかった
「こちらこそ」
俺は無意識に受け入れる言葉を発していた
迷うことすら忘れていた
彼女と重ねた時間が天国に思える
彼女とならたとえ地獄にいたとしても幸せに感じるかもしれないな、と一人で納得した
これが俺達の秘密の恋の始まりだった――
俺は彼女の赤い唇にそっと口づけをした
そのキスはまるで結婚式で愛を誓い合うようなキスだった
甘く切ないキスに頭がぐらりとする
完全に彼女の虜になっていた
二人だけの二人しか知らない恋――
しかし決してキスとは違い、甘く切ない恋ではない
彼女の唇から離れたとき、左手の薬指がちくりと痛んだ
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