2、事故

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丁度私が5歳の誕生日を迎える1週間前のこと…。 あの日、母は私とお父さんを家に残し東京のデパートに出かけていました。 首都圏内とはいえ、田んぼと畑だらけの地域で お世辞にも都会とは言い難い場所に住んでいるので、東京に行くにも電車を4、5回乗り継ぐ必要があり、母は午前中に家を出発していました。 一方、私とお父さんはテレビやDVDを見て時間を過ごしていたのですが、目も疲れてきたので、お父さんは私と遊んでくれることになりました。 床屋さんごっこを提案すると、お父さんも乗り気で、道具などを用意してくれました。 そういえばあの時使った鋏…まだ残っているんです。 ピンク色の可愛い鋏。 少し先が尖っているモノだったので、子供がいじるには危険な気もするのですが・・・。 床屋さんは私、お父さんはお客さんです。 櫛で髪を梳かし、どんな髪型にしますか、と聞くと、お父さんは短くしてくれと一言で返してきました。 例の鋏を手に取り、頭の上で髪を切る真似事をしました。 本当に切らないように気をつけてくれよ。 と、何度も念を押されていたのですが、長い間チョキチョキと鋏を動かす動作だけではあの時の私はすぐに飽きてしまったのでしょう。 私が一瞬テレビに目を向けたとき誤って本当の髪を切ってしまいました。
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