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犬は話を変えた。
今日もウチはみんな学校やら仕事やらで誰も家に居ないし、サリちゃんの両親も今朝いつも通り出ていった、なのになぜサリちゃんだけは出かけてないのか、体調が悪いのか、と。
「そんなこと、あたしが知るわけないじゃん」
この犬には『有り得ない』のだ。
あたしのやることなすことすべてが。
仕方ないんだ。
犬とネコの違いだ。
あんたらはうちらと違って、ヒトに依存できるから。
ヒトが辛いんだと気付いてみたところでネコにできることは、ネズミやスズメを捕まえてみせるくらい。
あたしなんかが寄り添って慰めきれる程、ヒトは簡単じゃない。
涙をなめてあげる舌は、ザラザラより滑らかな方がいいに決まってる。
いつも傍にいるよりも、少し離れてることに慣れておかないと。
いつかは、離れてしまうから。
サリちゃんのせいであたしが悲しむのも、あたしのせいでサリちゃんが悲しむのも、それだけはきっと。
スズメがどこかで鳴いている。
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