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冷という源氏名は和樹さんがつけてくれた。
理由は俺の目は冷たいから。そのまま。
「でもな冷、冷たいものは温かいものと合わせれば絶妙によくなるんだよ。」
その言葉の意味は俺にはまだよくわかんねぇ。
「冷様…もう美咲疲れちゃったよ…。」
いつもの様に店に来てた美咲。
「何の為に生きてるのかわからなくなっちゃった…」
髪もボサボサで化粧も適当。
こんな美咲は初めて見た。
でも…そんな重い話俺にすんなよな。ハァ…。
『じゃあもう仕事止めればいいじゃん』
思ってもない事を言ってみる。
「でも…でも…。
冷様に会えなくなるなんて考えられないもん…。」
はい、予想通りの答え。
何で女ってこんな馬鹿なんだ?
言ってる事が矛盾してる。
『だったら頑張るしかないだろ?
俺だって早く上がりてぇよ。
だから、な?美咲、一緒に頑張ろうぜ…。』
そう言って頭を撫でると美咲はうん、うんと言いながら泣き出した。
欲しいものが簡単に手に入っちゃつまんねぇだろ。美咲もそうだ。
ここで俺が美咲に
これからは店じゃないところで会おうって言ったって幸せだと思うのはほんの一瞬だよ。
結局その後はいつもの様に「そんな人だとは思わなかった。」って毎回お決まりの台詞を言って即サヨナラって事になるぜ。
なら、このままのが良いだろ?
この店の中に入れば俺は王子と呼ばれて、隣に座るだけで喜んで金を使う価値がある男になれるんだ。
女は…
ホストは夢の世界って言うが
もしかしたら俺にとってもそうなのかもしれない。
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