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「せんせい、さよおなら。みなさん、さよおなら!」
元気よくサヨナラのあいさつを言って、見送ってくれる皆に向かってバイバイ。
ブンブンと振った手で、そのままハレの手を握ってみると、ハレはぎこちない動きでタマリの小さな手のひらを包んでくれた。
小さな二つの影が、ゆっくり辿る帰り道。
「ぱぱとままは?はれちゃん」
『それが…まだ、お仕事が終わっていないんですよ』
「そっかぁ…。
おしごと、いつおわるの?」
『今日は、二人とも帰るのが遅くなると言ってました。
“先にご飯を食べて、良い子で寝ててね”と、ミキちゃ…お母さんが言ってましたよ』
「…じゃぁ、きょうははれちゃんとずっといっしょなの?」
『…そういうことです』
「ふーん」
この時、不意に、ハレの足が止まった。
そして、赤く燃え上がる太陽のようなその姿からは想像できない程、弱々しい声で一言。
『…お母さんのほうが、いいですよね』
キュイン、と機械音を立てながら、小さく俯いていく。
そんなハレにタマリは首を横に振りながら「そんなことないよ」と笑顔を浮かべてみせる。
「ままがいないのはさみしいけど、はれちゃんがいるからさみしくないよ」
『タマリちゃん…』
「それにねーたまりはねー、はれちゃんのことだいすきなんだよ!
だってはれちゃんってかっこいいもん!!」
まるで自分のことのように胸を張って誇らしげに言う女の子に、ハレは思わず気を緩めてしまった。
「でもさぁ、はれちゃんは“オンナノコ”だから、もっとおしゃれしてもいいとおもうんだ」
『御洒落…ですか?』
「うん、あかもいいけどピンクもかわいいよー。
ほら、あーゆうのいいでしょ」
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