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「玲~?」
今日は自分でもびっくりするくらい、ずっと考えていた。
放課後の私は、他に考える余裕がないくらいだった。
愛花の呼び掛けに、ようやく現実世界へ戻ってきたというところだろうか。
「ねぇ、玲。また、病院行ったほうが」
「大丈夫よ!」
「……玲、入院していた時のこと覚えてる?」
「気が付けば一ヶ月?」
少しむすっとした愛花に、苦笑いで答えてみた。
半年前、一ヶ月ほど入院していたけど、私は全く覚えがない。
交通事故にあって、それから一ヶ月も意識がなかったみたいだから。
私の中で消えた、一ヶ月という時間。
「あの時、私すごく寂しかったんだから」
「う、うん……」
「だから。一人で考えごとをして、また一人で何処かへ行かないで」
「愛花……」
消えてしまった光は、どうすれば取り戻せるのか。
分からなかった。だから、小さな光さえ欲しくなる。
「愛花、私は何処にも行かないよ」
「だったら、今朝からそんなに一人で考えて――」
「大丈夫。気になることがあるだけだから」
「――長谷川って人?」
「確認、したいだけ」
こんなにも気になる理由なんか分からない。
だけど知りたい。
黎くんの存在を、クラス名簿から消えてしまった黎くんを。
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