無い道

4/4
前へ
/11ページ
次へ
  「玲~?」 今日は自分でもびっくりするくらい、ずっと考えていた。 放課後の私は、他に考える余裕がないくらいだった。 愛花の呼び掛けに、ようやく現実世界へ戻ってきたというところだろうか。 「ねぇ、玲。また、病院行ったほうが」 「大丈夫よ!」 「……玲、入院していた時のこと覚えてる?」 「気が付けば一ヶ月?」 少しむすっとした愛花に、苦笑いで答えてみた。 半年前、一ヶ月ほど入院していたけど、私は全く覚えがない。 交通事故にあって、それから一ヶ月も意識がなかったみたいだから。 私の中で消えた、一ヶ月という時間。 「あの時、私すごく寂しかったんだから」 「う、うん……」 「だから。一人で考えごとをして、また一人で何処かへ行かないで」 「愛花……」 消えてしまった光は、どうすれば取り戻せるのか。 分からなかった。だから、小さな光さえ欲しくなる。 「愛花、私は何処にも行かないよ」 「だったら、今朝からそんなに一人で考えて――」 「大丈夫。気になることがあるだけだから」 「――長谷川って人?」 「確認、したいだけ」 こんなにも気になる理由なんか分からない。 だけど知りたい。 黎くんの存在を、クラス名簿から消えてしまった黎くんを。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加