寄り道

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寂しさには慣れてる。 私には父もいなければ兄弟もいない。 母は仕事だから、私は常に一人きり。 いつも通る川辺は、今日も人影はない。 川が、月明かりに照らされてところどころ銀色に輝いている。 「……あれっ?」 川を眺めて走っていると、見慣れないかげを見つけた。 私は自転車を止めて、そのかげを見つめる。 自転車を押しながら、一歩一歩近づく。 (――人だ) そのかげが明らかに人だと分かったときは、もうすぐ近くまで来ていた。暗闇に目が慣れていなければ、まだ近くまで行かないと分からなかっただろう。 その人は、川辺に横たわり、目を瞑って空を見上げるように寝ていた。 カシャン、と私は自転車を立てた。その音に気付いたのか、横たわっているその人は、ゆっくり目を開けてこちらを向いた。 「あれ。よく僕がここにいるって分かったね」 そう言いながら、ゆっくり起き上がる。その姿は私と同い年くらいか。来ている服は、うちの学校のものだった。 「ごめん、起こしちゃった?」 私はそっと近づいて謝る。しかし、彼は笑顔で「寝てないから」と答えた。 「君、帰らなくていいの?」 私がそう尋ねると、彼も同じ質問をしてきた。 「私は、まだ帰らなくてもいいの」 先に質問したのに、彼の答えを聞かずに答えてしまった。 「じゃあ、話し相手になってよ」 彼は、また笑顔でそう言った。
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