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思いがけない言葉に、私は絶句する。
私は構わないが、彼は帰らなくていいのだろうか。
「僕は、一人暮らしだからいいんだ」
そう言うと、彼はごろんと寝転んだ。
「寄り道して行こう、かなぁ……」
そう呟いて、私は彼の隣に腰を下ろした。
「あなた、うちの高校の生徒よね。何年何組?」
突然こんなことを聞くのは失礼だっただろうか。
「わ、私は崎山 玲。三年二組」
まずは自分から名乗る。すると、彼は再び起き上がってこちらを見た。
「僕と名前が同じだね。僕は鈴村 黎」
その偶然に、私は少しだけドキッとした。今まで18年間生きてきて、自分と同じ名前の人と、こうして直接会えたことが一度もなかったから。
「ちなみに、オレも三年二組」
そして、付け加えるように黎くんは言った。
ちょっと得意そうに。
「え!? そうなの?」
「そう。ちなみに、三年二組になったのは今年が二回目」
黎くんはまた寝転んだ。私はその姿を見ながら少しだけ考えてみた。
同じクラスに、鈴村くんって名前のこが、いただろうか……。しかも、三年二組は二回目――?
「ちなみに、学校や戸籍では“長谷川黎”っていうんだ」
その名前には聞き覚えがある。クラスで長期間欠席している生徒だ。
「ま、まさか……一つ年上の?」
「そ、留年生なんだ」
またも得意そうな表情で語る黎くん。
「――ごめんなさい、敬語……」
「いいよ。クラスメイトじゃん」
「あの、“鈴村”って……?」
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