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翌日、いつもと同じように学校へ行った。
昨日のあの場所に、黎くんはいなかった。
そうだ、学校で名簿を確認しなきゃ。黎くんの存在を、ちゃんと知らなきゃ。そんな気持ちを抱えて、教室に入った。
「玲、おはよう」
「おはようっ」
いつもそうやって明るくおはようを言ってくれる友人、愛花。
「ねえ愛花。クラス名簿って何処だっけ」
「え? ああ、ここよ」
一瞬きょとんとした愛花が、教卓の中からクラス名簿を取り出してくれた。
「なになにー? 玲ってば、誰か気になる人いるの?」
「ちがっ、そんなんじゃないよ!」
目を細めて呟いた愛花の言葉に、思わず叫んでしまった。その声が教室中に響いて、一瞬で沈黙の空気になってしまった。
「ご、ごめん……」
ただ私がそれだけ呟くと、またクラスの中はいつものようにざわつきだした。
そして私は、クラス名簿の一番上から下まで目を通した。
だけど、おかしい。
「……ねえ愛花」
「何?」
だって。
「うちのクラスに、長期欠席の人いる?」
「いないじゃない。どうしたのよ玲」
クラス名簿に、黎くんの名前が無いんだもの。
「愛花」
「ん?」
「長谷川くんって人、どのクラスか知ってる?」
こんなにも黎くんが気になる自分が可笑しい。可笑しいのに、聞いてしまう。
「……いないよ。うちの学年に、長谷川って男子」
「――え」
夢でも見ていたのだろうか。突然、頭の中が真っ白になって、自分でも何をしているのか分からなくなった。
黎くんの言葉は、夢?
黎くん自体が、夢?
光が消えて、真っ暗闇に放り込まれた気持ちになってしまった。
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