神はいない

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  彼女は、毛布を被ったまま体を起こす。粗末なクリーム色の服の胸元に鈍く光る、丸いリング状のそれを、彼女はつまみあげ、再び口を開いた。 「神を信じる者は、お嫌いですか?」 デロスは驚いた。先ほどまでのあどけない少女の顔が、今やその眼に厳しさと気品を写し、急に大人びて、風格さえあった。昨日のような強い「気配」のような力はなかったものの、その瞳と相対すると、何か別の力、圧迫感というのか、まるで厳しく尋問されているような息苦しさを感じた。 デロスは反射的に目を逸らし、この妙な空気、息苦しさの解消法を、買ってきた食べ物を与えることに見いだした。 が、安いパンとリンゴが入った袋に手を突っ込んでいるうちに、彼女の視線に堪えられなかった自分が情けなく思えてきて、今一度彼女を見つめ、デロスは言った。 「神は嫌いだ」 彼女の目が、わずかに揺らいだように見えた。しかし、なおも息苦しさは改善されない。
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