神はいない

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  デロスは堪えきれず口を挟んだ。 「いいか、俺は望んでこの力を手に入れたわけじゃない。生まれつきこうなんだ。勝手にその神とやらのおかげみたいに言わないでくれ」 「でも現にそれは、天から落ちた『神の涙』のおかげで得た力でしょう」 「空から降ってきたのはただの石ころだ」 沈黙。 デロスと少女は、お互いに睨みあったまま動かない。 デロスは、このような信仰の厚い人間に何を言っても無駄だと言うことをよくわかっていた。そのため、信心深い人間、首に輪を提げた人間とは、できるだけ関わらないようにし、やむを得ず話さなくてはならない場合でも、そのことには触れないように気を使っていた。しかし、こうなってしまった以上は仕方がない。 さてどうしたものかと、デロスは何気なく視線を落とした。だが、ふと目に入ったそれに、落ち着き始めていた彼の思考は、いきなり沸点まで到達した。
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