3/10
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
   デロスは少女を連れ、急いで宿を飛び出した。少女の感情の爆発は、それがどういった種類のものであれ、周囲に彼女の存在をアピールすることになる。現に宿を出ていく時、デロスは店の親父に、「一体何しやがったんだ」と、怒鳴られたのである。  デロスと少女は、宿を出て、人通りの多い道を避け、町の南へと早足で進む。 前を行くデロスと、微妙な距離を置いて、その後ろに付く少女。 途中、狭く細い路地に入ったところで、少女が立ち止まった。 デロスも立ち止まり、振り返って、「どうした」と、少女に一歩近づく。 と、同時に、少女は一歩後退りする。デロスは、小さくため息をついた。 「どうしたんだ。ぐずぐずしていると見つかるぞ」 「……寒い」 確かに彼女は、まだ冬の寒さも抜けきらないこの時期に、布切れのようなワンピース一枚と、あべこべな格好をしていた。華奢な手足は赤みを帯び、小さな足は黒く汚れ、直に地べたに置かれている。彼女は、靴さえも履いていないのだった。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!