ウーラノス -Ouranos-

力

　
「何か着るものを買ってくるから、とりあえずこれで我慢してくれ」

デロスはそう言って、自分の着るクロークを脱いだ。彼女にそれを渡そうと近づくと、またしても彼女は遠ざかる。しょうがないので、クロークを放り投げてやる。
しかし彼女は受け取ろうともしない。ばさりと地面に落ちたクロークを、動物の死骸でも触るかのように、おそるおそるつまみ上げる。
デロスは、もううんざりしてしまって、少女の手からクロークをひったくると、少女を一人残し、元来た道を帰り始めた。

ちょっと見られたくらいで何だあの態度は。あれが助けてくれた恩人に対してすることかい。もう勝手にしてくれ。そもそも、何だってあんなどこの誰ともわからない小娘を、俺は今まで必死にかくまおうとしてたんだ？　あんな信仰女に付き合って、危ない目をみるなんて馬鹿げてる。
デロスは、そう心の中で吐き捨てながらも、なぜ自分が彼女を助けたのかを、ぼんやりとではあるが理解していた。