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   デロスは、少女の気配の動きが止まったことに気づいた。その方角は、町の南西。そこに出入口はなく、四角く町を囲む塀の、ちょうど角にあたる場所であったはずである。 相手もこちらに気付き、待ち伏せをしているのだと、デロスは悟った。となれば、相手側もそれなりの「力」を持つものたちであるということになる。 デロスは、今にも崩れそうな、古い土壁の空き家の角から、狭く暗い路地に入る。歩を緩め、息を整えながら、感覚を研ぎ澄ます。少女の気配が大きすぎてよくわからないが、嫌な気配を放っているものも、確かに存在した。 ゆっくりと路地を進みつつ、ある程度それらの気配の位置がわかると、デロスは、それまで蜘蛛の巣のように張り巡らせていた感覚の糸を、今度は一本づつ、直接その敵意たちに張り付ける。 彼らがこちらの気配を読んで動いているのならば、必要最低限にまで力を抑えこんだデロスは、突然消えたように感じられるはずである。かすかに伝わってくる彼らの動揺が、デロスにそれを確信させた。
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