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「危ない!!」
だが彼女が叫ぶ前に、デロスは、家屋の上で様子をうかがっていた男が、飛び降りてきていることに気づいていた。
デロスは後ろを見ることなく、背に降り下ろされた剣をひらりとかわすと、拾い上げた剣を振りきった。
男は脇腹から溢れる血で、下半身を真っ赤にそめながら、よろよろと、仰向けに地面に倒れた。
「敵意がむき出しすぎる」
デロスは少女の縄をほどきつつ、呟いた。彼女の体はカタカタと震え、その目は、血の海に横たわる男に釘付けだった。
「……けて」
少女の手を引き、デロスがその場を立ち去ろうとしたとき、掠れたか細い声が耳に入った。
「たす……け……て」
デロスは言う。
「自分を殺そうとした人間を助けるほど、俺はお人好しじゃない」
少女の手は、痛いほどに、デロスの手を握りしめていた。
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