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赤コートの女はイザベラと名乗った。交易の町ボリスタに、それなりに名の知れた貿易商の父親がおり、彼女はその父親の手伝いをしているらしい。父親が多忙でほとんど動けない代わりに、彼女が各地に飛び回り、大事な商品の信頼性と安全な運搬を確認しているのだという。
今回も例のごとく、エニウスまで商品の運搬監督を勤め、その帰りの馬車に、運よくデロスたちは乗り込んだのである。
「私、最初エルマちゃんを見たときにピーンときましたの。この子は天使の子か、でなければ天使の使いか何かだわ。この子を救うことが、天に課せられた私の使命なんだって。だってそうでしょう? こんな澄んだ瞳をもった人なんて、この大陸の人間はおろか、外来人にだっていないわ。しかも見て、この桃みたいに柔らかそうな頬!」
イザベラはそう言って、エルマの顔に手を伸ばす。エルマはびくりとして顔を引っ込める。
「まあ、シャイなのね、エルマちゃん」
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