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デロスが声の方に顔を向けると、イザベラが、こちらを怪訝そうに見つめていた。
「俺か?」
「あなた以外に誰がいますの? エルマちゃんのお兄様なのでしょう? エルマちゃんが今そう言いましたわ」
デロスはエルマに目をやる。エルマは、ちらりとこちらに視線を投げてよこした。それは謝罪の意味なのか、勘違いするなという敵意なのか、デロスには判断がつかなかった。
「すまない。ぼーっとしていた」
そういうことになってしまったのなら、そういうことで通した方がいい。
「まったく。本当にこの子と血が繋がっているのか、私には信じられませんわ」
イザベラは仰々しく肩を落とす。冗談か何かでやっているのではなく、心底そう思っているようである。
「どうかお気を悪くなさらないでください、旅のお方」
口を開いたのは、イザベラの横に座っている短髪の男だった。
「イザベラ様は、どうにも男を毛嫌いする癖がありまして、旦那様、イザベラ様のお父上以外の男性に対してはいつもこうなのです」
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