気配

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  デロスは、上下左右に巧みツノウマを操り、寄ってくる猿狼たちを翻弄しつつ、右手の剣で、二匹、三匹と斬り捨てていった。  デロスが最後の一匹の首をはねたときには、武装した人間たちは、既にデロスに背を向け、彼女を連れて逃げだそうとしていた。 デロスはすぐさま追いつくと、ツノウマから飛び降り、その勢いのまま一人を蹴り倒した。 残りの二人は剣を抜き、デロスに斬りかかったが、一人は振り下ろした剣を腕ごとはね飛ばされ、もう一人は、腕を斬られてよろめいた相方にぶつかり、もたついているうちに、斬り捨てられてしまった。  デロスは、剣の血をクロークの裏で拭って鞘に収めると、くわえた松明を手に持ち直し、ぺたりと座り込んでしまっている彼女に近づき、手をとった。 「大丈夫か」 彼女は固い表情で、しっかりと頷いた。 「早くここを離れよう。騒ぎを聞きつけて人がやってくるかもしれない」 再び彼女は頷き、立ち上がった。デロスは彼女の手を引いて走りだした。
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