神はいない

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   ペペの村から、川沿いに西に半日ほど馬を走らせると、エニウスという比較的大きな町に着く。 エニウスは、他の町への中継地点として栄えている。別の名を「出会いの町」といい、これは、それぞれ北、南、西からやってきた三人がこの場所で出会い、町が出来たと伝えられているためである。  各地からやってくる商人や旅人が溢れ、町の5つの宿はいつも満室である。 とはいっても、この5つは比較的まともで、安全な宿であり、そうでない宿もいくつかある。 その中の1つ、一見するとただの雑貨屋にしか見えないその宿に、デロスと彼女は身を隠していた。 この宿は、一般にはほとんど知られていないため、少々割高ではあるが、隠れるにはもってこいの場所で、宿泊客は、それぞれがそれぞれの理由で、息を殺してこの宿に潜んでいるのだった。  デロスが、町で手に入れた食料を腕に抱え、物置のようなその部屋にもどると、彼女はまだ、カビ臭いベッドの上で寝息をたてていた。
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