友達になろうよ。

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「それでね…。お遊戯会の前日…。 あの子が話してくれた幼稚園での出来事が、あんまりにも面白くて…。 本当は、お遊戯会に行ける予定に無かったんだけど…。 あの日、徹夜して無理して行っちゃて…。 慣れない事は、やるもんじゃ無いわね…。 少しカリカリしてたのよ…。」   コーヒーが紗英の目の前に置かれた。 紗英はコーヒーを一口口に入れて、口を湿らせると紗英が一番言いたい事を切り出した。   「矢城さん、ごめんなさい。 私アナタに酷い事言って…。 アナタが怒るのもしょうがないわ。 私でも、私の一言で叩いてたわよ。 本当に恥ずかしい…。」   紗英はそう言うと、天美に対して深々と頭を下げるのだった。 天美は、こちらから謝ろうとしたのに、まさか逆に謝られるとは…。 予想外な展開に動揺しながらも、礼節を持って対応する。   「イエ、あの…。 そんな私の方が謝らないといけないのに…。 私の方こそごめんなさい。つい手が出ちゃって…。」    天美はそう言うと、紗英と同じ位に深々とお辞儀をしたのだった。   「顔を上げて矢城さん。謝るのはこっちの方なのよ。」   「イエ、そんな…。私の方が…。」   そう二人は、謝罪の言葉のやりとりを繰り返していると、二人とも何だか可笑しくなってきた。 ハタから見た自分たちの姿を思い浮かべると笑えてくるのだった。 二人で同時に謝るのを止めると、天美が 笑顔で話し始めた。    「最近、私の子供達が元気無くて、 特に勇人なんかいつも暗い顔しちゃって…。 見てるこっちが辛くなるの…。」   「そう、矢城さんの所もなの?。 ウチもね、そうなの…。 また前みたいに逆戻りしちゃって。 幼稚園の事、全然話ししてくれなくなって…。 大人のケンカに子供を巻き込んじゃって、ホントバカな事したわ。 ソナタの初めて出来たお友達なのに…。」   紗英は話しを続ける。   「矢城さん私ね、ようやく分かったの…。 ソナタが少しずつ変わっていった理由が…。 幼稚園に行くようになったから、変わったんだと思ってたんだけど…。 本当は違った…。 お友達が出来たから、変わっていったのに…。 私、そんな事も気づけなかった…。」   その後天美と紗英の二人は、子供の話題から入り。 身の回りの話し、過去の話しや子育ての苦労話しで、少しずつ打ち解けあっていった…。 人はお互いがどんな人間か話し、分かる事で、距離を縮め、時には離れたりするのだ。
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