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「青い鳥をね、探してるんだ。」
縁は唐突にそんな事を言い出した。
「へ?」
首を傾げる僕を見ながら、縁は続ける。
「ユカリ君が聞いたんじゃないか、何故此処にいるのか、ボクはね、青い鳥の噂を確かめたくて此処に来たんだよ。」
青い鳥。童話で有名であろう幸せを呼ぶ鳥の事だ。
その名をもじって常に理想を求める人々の事を"青い鳥症候群"と呼んだりする。
しかし、縁が言うのはそういった事ではなく、確かに出回っている一つの噂だった。
『この街には"青い鳥"が何処かに潜んでおり、それを見付ければ願いは叶う』と言った内容で、この近辺ではしばしば酒の肴にされたりする話でもあるが、当然真偽を求めるでもなく、都市伝説である。
もしくは、"青い鳥とは各々が求める幸せである、それをこの街で見つけなさい"と言った面白味の無い話なのだろう。
そう言ったら縁は憤慨した様子を見せた。
「探す前から諦めていたら何も始まらないよ。」
「いないものを探しても仕方無いだろ」
「相変わらず悲観的だね、君は。」
縁は悲しそうな顔をした。
「まだ、ユカリ君はこの世界を憎んでいるのかい。」
そうだ、そうだった。
僕が彼女を拒絶した切っ掛け、それが一番重大だったのに。
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