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僕が中学校3年の頃に、両親は交通事故で亡くなった。
あまりに不意で、突発的で、どうしようも無い出来事に僕の頭は追い付いて無かったのだと思う。
あの時の葬式の両親の死顔だけは今もはっきり思い出せる。
それ以外は、あまり覚えていない。
いや、記憶が欠如しているのだ。
そして彼女に襲われたのはその後だった。
今思い出した。
確かその時彼女は同じ様な台詞を言ったのだ。
そして、僕はキレた。
持っているもの、持っていないもの、失ったもの、失っていないもの、同じ名前の二人はあまりに相対的すぎた。
彼女はそれが故に僕に惹かれ、僕はそれが故に彼女を避けた。
「憎い、よ。世界も、君も。」
吐き捨てる様に言った僕に縁はとても悲しそうな顔をする。
その顔を見ると、身体の芯からのざわつきを感じて、この場から逃げ出したくなる。
「学校や、バイトは?」
「学校は夏休み、バイトは首になった。生活費はたんまりある。」
ベッドに座っていた縁は立ち上がり、地べたに座り込んでいた僕に近付くと、中腰になり僕の手を掴む。
その冷たさに思わず身体を跳ねさせてしまう。
「じゃあ探しに行こう、青い鳥を。理屈とかそういうのは捨てて。」
縁の体温の冷たさが非常に心地好く感じる。
その指先一つ一つの鼓動が熱となり、電撃となって僕の身体をかけ巡っていく。
両腕に甘く、とろけた快感が巡り行く。
強い痺れと快感を感じながらも僕は暫くその感覚に身を任せていた。
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