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馬鹿馬鹿しい程に、世界は僕を置いてけぼりに回る。僕一人なんて所詮地球の資材を食い荒らす一人でしか無い。僕がこの世から消え去っても、世界は動き続ける。
世界は、生き続ける。
彼女の愛したこの世界は、延々とその生を行使し続け、考え切れない程の生命を孕んでいき、そして失う。
夕暮れ、落ちていく太陽の日射しがビルの屋上に立つ僕を眩しく照らした。簡素に済ましたこの服装ではこのビルの屋上に吹く風は、少し寒く感じる。
「これで、良いのかな」
縁、と彼女の名前を呟いた。僕は彼女を愛していた。彼女はこの世界を本当に愛していた。僕はこの世界を本当に憎んでいたのだ。
彼女は逝く寸前に声すら出す事も許されない口から「ありがとう」と言った。
それが彼女の願いだった。
夕陽の下、両腕をかざす。
まだ、君を殺した時の感触が手に残っているよ。
君の鼓動、君の首筋の美しさ、君の命の太さ、君の苦しむ顔。
愛する彼女の願いだった。
彼女は確かに僕に、
そう言ったんだ。
「殺してくれ、と。」
屋上から空を見上げた。
雲が空を覆い、宇宙を隠す。天国なんか何処にあるのだ、と思う。
まぁ、少なくとも僕も君も天国に行けはしないだろう。
君は僕に生きろと言ったけど、君が僕にとっての…
「青い鳥だったんだ」
無重力。蹴った足から世界が反転した。自由になった気がした。もう、僕は意識が途絶えて、君と、また、
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