青い鳥

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街は、暑さを格段に増している様に思えた。 8月の真夏日、暑いのはそれは当然ではあるが、こういった都会の街を歩くとその暑さはより現実味を帯びて僕の身体を攻撃する。 鞄の中からペットボトルのお茶を取り出すと、一気に飲み干してしまった。 今日は、はっきり言うと暇な日で、バイトもクビになったばかりなので相当に暇なご身分と言える。 まあ、高校の時から無欲の部類に入っていたであろう自分がひたすらバイトしていた金、そしてサークルにも所属していない僕が去年にひたすらバイトして貯めた金は相当にあるので、暫く生活には困るまい。 特に目的も無く、街をぶらつく。そう言ったのが好きな性分らしく、これで大抵の暇は潰せるし、色々な人が見れるので楽しくもある。 駅から大量の人が吹き出す様に、行き来を繰り返す。 スーツを着て無気力な顔をしてひたすらに歩く社会人、その傍ら社会に反旗を翻すように奇抜な格好をして今を楽しめれば良いとでも言う様なスタンスの若者、そういった混ざり具合は、非常に面白く思わせる。 ひたすらに足を進ませる。定食屋に行き来する社会人、服屋はアクセサリーショップの勧誘に必死なまた違った社会人。 寂れた自動販売機は羨ましそうにその光景をじっと見ていた。 そんな街の中にも、非常に好きな場所があった。 大量の人とその欲望が溢れ返り、喧騒溢れる街の少し外れにある、忘れ去られたかの様に、まるでそこだけ切り抜かれたかの様な、小さい公園。 生い茂る木々、あくまでも簡素に作られた滑り台と砂場とベンチだけの空間。 本来そこを歓迎するはず達の子供達は冷房の効いた部屋で出来る涼しく楽しいバーチャルでの遊びに夢中で、外に出て遊ぼうというやんちゃな餓鬼はもはや絶滅種と化している。 汚い空気が漂う街の中とは思えないくらい、そこには綺麗さが漂っていた。 目の前にマンションが聳え立つのは非常に残念なのだが。 その公園のベンチに座り、読書をするのが本当に好きで、幾らでも時間を潰せる気がする。 いつもの様に、読書をしようと公園の中に入るとベンチにはすでに誰かがいる事に気がついた。 しかも質が悪い事にそこに寝そべってるのだ。
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