Tako

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海。 広大なる海。 海原には浪漫と冒険が満ちている。 ま、とりあえずそれはわきに置いといてこの物語はあまりに単純に唐突になんの脈絡もなく<海>から始まるのである。 ざばーん。ざばーん。 うちかえす波のおと。 遠くで鳴くウミネコたち。 国道から下に見える砂浜の波打ち際を黒いレインコートを着た男が歩いている。 頭にはチューリップハット。 片手に鳥かご。 その鳥かごのなかにはぬめぬめした光沢のタコの足がはみ出している。 男「きたな。ニヤリ。」 空がかき曇り海が濁る。 海面が盛りあがりその中から鞭のようなものが男に向かって伸びる。 男は鳥かごを前に突き出した。 その瞬間男に向かっていたタコの足は動きを止めた。 光がきらめいた。 タコの足が打ち据えられ砂浜に落ちる。 ぬめりが落ちていた。 男「軟体動物でも子を思う気持ちは同じか…」 男は手にした大根を構え直した。 つづく
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