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-篝火-
妄想だと笑われようと
妄執だと蔑まれようと
それは確かな現実であり
それは決して妄言でない
何に悩んでいたのだろう
何に怯えていたのだろう
幾度となく手放そうとし
当たり前に出来なかった
金の問題などではなくて
心の問題だったみたいで
今夜ふと思い至って箱を開けた
黒い箱に収められた闇色の光
糞餓鬼には似つかわしくない
黒真珠の様な妖艶を纏った耀き
いつかの夜に煌めいた光
二つの螺旋が重なり合い
一つの熱き炎となった夜
暗いベッドの上で
確めるように弄ぶ
けれど意思は擦りきれ
魂も尽きていたそれは
何も答えてくれなくて
冷たい熱を発するだけ
久方ぶりに手に収まったそれは
やはりずっしりと重かった……
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