三・ワインレッド

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三・ワインレッド

「ヨウジ君とリクはいつも一緒ねぇ」 お母さんはいつも嬉しそうに言ってた。 「ヨウジ君、いつでもリクを嫁に貰ってくれよ」 お父さんもからかうようにいつも言った。 ニコちゃんはそのたび軽く頷いた。 私は単純に、ニコちゃんもそう思ってくれてるんだって思ってた。 今は分かる。きっと気を使ってくれたんだと思う。 ニコちゃんはお母さんがいない。 離婚しちゃったんだって聞いた。 私達が10歳の年。ニコちゃんのお父さんの誕生日。 レストラン。 私達はオレンジジュース。お母さん達は赤ワイン。 「二人はいつもニコイチねぇ…あ!ヨウジ君はニコちゃん、リクはイッちゃんってどう?」 「はは、そりゃいい」 「うん」 ニコちゃんはその時初めて笑った。 「じゃあ、乾杯しましょうか」 子供ながらに、ワインレッドの綺麗な色に思わず見とれた。 次は5月のお母さんのお誕生日。楽しみだなって、思った。
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