むーかし、むかし

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「兄さん、僕は兄さんが好きなんだ」 子供の頃、一度だけ告白した事があった リチャードがバロニアへ帰った後から己が捨てられるまでの間。 場所は己とアスベルの部屋 何時も通りアスベルの布団の中じゃれあっていた時に突然に告白した 兄に家族としてではなく、一人の男として好意を寄せていると解ったのは七歳の頃 子供だからこそ簡単に受け入れられた 子供だからこそ己の気持ちを口に出来た 「何言ってんだよヒューバート、俺も大好きにきまってんだろ」 子供だからこそ、兄のあの言葉が嬉しいと純粋に感じれた 兄が己を弟としか見ていないと解ったのは再会してから 兄の言葉を胸に、この七年間生き抜いてきた 己に鞭をうってまで兄に会うため頑張ってきた 再会したのはラントだった お互い子供ではなくなっていて、純粋に"好きだ"とは口に出来ない歳になった けれど兄は 「会えてよかったヒューバート…ずっと会いたかった、大好きだヒューバート」 幾分低くなった声音で 幾分長くなった腕で 己を抱き締めそう言った 此方が恥ずかしくなるほど兄の言葉は真っ直ぐで純粋だった 嬉しかった これほどひねくれてしまった己を昔と変わらず抱き締めてくれた事が けれど子供の時と今は違う 同じように抱き締め返す事だけは出来なかった
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