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「あ、雪だよ!」
まさか、と思う俺の視界をフワフワと通り過ぎる牡丹雪。
天気は晴れ。
見上げた空は透き通るように、水色。
だが、確かに雪は降っていた。
えへへ~と嬉しそうに、亜美は繋いでいた手をブンブン振る。
「なんだか神秘的だね~」
「ん~」
「これって誰の嫁入りなのかなぁ?」
「ん~……」
天気雨は別名、狐の嫁入りと言うが、天気雪の場合、か。
狐ときたら狸だろうか? それとも猫?
この2つならどっちでもいい気がする。
「亜美は何だと思う?」
「……亀?」
「かめ!?」
「え……ミドリガメ?」
「いや種類の問題じゃなくて。普通、狸とかじゃないの?」
え~、と言いたそうな目で見られる。
そんなに変なこと言ってないと思う。
「狸より亀の方がかわいいじゃん!」
「いやいや。狐ときたら狸でしょ」
亀!狸!亀!狸!としばらく不毛な闘いが続く。
プ~と膨れる亜美。
と、亜美の視線が前方に固定され、口がパカッと開いた。
「ん?」
視線の先を辿ると大きな鴨が2匹。
その後ろを子供が7匹。
「……鴨の嫁入り?」
2人同時に噴き出した。
笑い声は水色の空へ吸い込まれる。
雪はいつの間にか、止んでいた。
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