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声、届きますか?
学生時代の仲間の訃報を聞くのは
何度目だろう。
あの頃は馬鹿やって、毎日が楽しかった。
その先にある未来も、輝いて見えたし
夢の選択肢もたくさんあった。
年々、焦りを感じるようになったのは
否めない。
このままじゃいけないって
何かに追い詰められるような感覚に
襲われる日々。
だけど、先輩。
どうしてあなたは死に急いだのか。
大学の、サークルの飲み会の帰り道、偶然電車で一緒になって、人であふれた車内で他愛もない話をしましたね。
あの時私は、降りようとする人の波にのまれてホームに押し出され、転んで踏まれてボロボロになりながら這いつくばって車内に戻りました。
そんな私を見て、先輩はクスクス笑っていましたね。
あの時、あなたは確かに笑ってた。
ねぇ、先輩。
笑いながら、「ほら」って手を差し出してくれたあなたに、私は憧れていたんですよ。
ねぇ、先輩。
あなたには、年下の私には計り知れない悩みがあったんでしょうね。
優しいあなたが、凍えるような冷たい海に飛び込んだのかと思うと、悲しくなります。
ねぇ、先輩。
返ってくる声はないけれど
私の声、聞こえますか?
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