プロローグ

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親には反対された。 だが、この進路を変える気は毛頭ない。 彼女は自らが“アトリエ”と呼んでいる部屋で絵画に没頭していた。 「……違う……違う!!」 狂ったように、彼女は絵画を突き破る。 何度も、何度も―― 「何故……何故なの?!私には、先生みたいな生きた絵が描けない?!」 彼女の部屋の隅には、『字戸 学』と描かれた絵画集がところせましと並んでいた。 彼女は、『字戸 学』という絵師に魅せられて、この道を一心不乱に突き進んで来た。 だからこそ……高校では『美術コース』を選択した――大学では『美大』へ進む。 彼女の生きる道は『字戸』と共に在る。 納得のいかない絵が出来ると彼女は『字戸』の絵画集を見て心を落ち着かせる。 何故だ…… 彼女は納得がいかない。 彼女の絵もそこまで悪くない。 寧ろそこらへんのアマチュアが描いた絵よりも数段上だ。 だが、それでも『字戸』のようにはいかなかった。
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